I氏の手紙

Ibuki Hideaki Free Talk

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奇想艦隊

「帝国大海戦」8巻と「帝国戦記」のあとがきで告知していた学研歴史群像新書(から出る予定)の架空戦記の枠を超えた奇想艦隊物「仮称第一〇四号作品」。先日、友人と電話中、その話が出た。
「何なの、その奇想艦隊物って?」
「八八艦隊って、あるでしょ。戦艦八隻と巡洋戦艦八隻の」
「あるある」
「新八八艦隊とか八八八艦隊ってのもあるでしょ。本屋で見かけたけど」
「ありますな。もしや、海上自衛隊の平成八八艦隊(護衛艦八隻と対潜ヘリ八機)がタイムスリップというか、パラレル・ワールドに跳んで、日本海軍の幻の八八艦隊と協力して戦うとか」
「おっ、その手があったか」
「かわぐちかいじの『ジパング』の艦隊版ですな。八八八八艦隊(笑)」
「そのうち八が漢字じゃなくて、カタカナのハになって、ハハハハハハハッ艦隊になるかも。黄金バットの笑い声か」
「ホントにそれやるの?」
「「迷霧の荒鷲」のときのように短篇集の中の一篇としてなら可能性はありますな。でも、ハズレ。八八艦隊は単にいってみただけで何の関係もなし。新作「仮称第一〇四号作品」は、かなりスケールがでかい話になります」
「全長30キロの氷山空母が出てくる? パナマ運河を通るときは140分割!」
「出ない出ない」
「火星人のかわりに金星人が攻めてくる? デザインはカニ? 金星ガニ」
「来ない来ない。ディーノ・ブッツァーティといっても、知る人は少ないだろうけど、その人の「戦艦“死”」という作品を80年代に古本屋で買った本で読んだとき、こんな幻想文学的な戦記を書いてみたいな、と思ったんだ。」
「げ、幻想文学!」
「作品を軍事的なリアルさという物差しだけで測る人(肯定・否定両派とも含む)にとっては、超ウルトラ・トンデモな設定とストーリーに属すると思う。でも、テーマはシリアスだし、それに真摯に向き合って書いているつもり」
「おっ、でかくでましたな」
「いつだってそうですよ。今回もまた大なり小なり、こだわりの部分は入れてますので、そこも見て欲しい。宣伝、宣伝」
「で、いつ出るの?」
「秋には出したいねえ……。ちなみに「仮称第一〇四号作品」はシリーズ物ではなく、きっちり一冊で終わる話」
「そのあとは?」
「年内に2.5冊ほど書く予定を入れているけど」
「その端数は何なの?」
「共作をひとつ考えているんで。もっとも、単に年内に終わらないから0.5なのかもしれないけど。どっちにしろ、はっきりしてきたら、また発表しますので、乞う御期待のほどを」

(2001.5.6記す)
2001.7.19 ◇to page top


近況・カレー・小池田マヤの新刊

 雑誌の仕事がひとつ終わり、次の仕事の前に一息つこうと、カレーを作る。タマネギとトマト、鳥のササミ肉を炒め、スパイス・ミックス(カルダモン、クミン、トウガラシ)を混ぜて出来上がり。簡単だけど、低脂肪で良いです。
(私は訳あって、脂肪を避ける生活をしております。くわしくは最初のフリートークか、今年の2月ころに発表した「闘病記」を参照してください。転んでも、ただでは起きん。いつかは食生活の本を出すぞ)
 カレーを食べながら、テレビを観ていると、スペインで「闘牛祭り」のニュース。街中を走る牛に踏まれるわ、角にひっかけられるわ、怪我人続出。しかし、みんな喜んでいる。
 円谷プロの倉庫を開ける、「怪獣祭り」というのはどうだろう。開けるまで、どんな怪獣が出てくるかわからない。エレキングの電撃尻尾で吹き飛ばされ、グビラのドリルで死屍累々。それでもみんな喜んで走る。うーむ。大伴昌司のグラビアの世界だ。
 食後は本屋へ。おおっ、小池田マヤの「すーぱータムタム完結編」が出ている。3巻が出てから、もうずいぶん経っている。雑誌に最終回が載ってからもう一年以上が経っているような気がする。あれ、4巻じゃなくて「完結編」?
 違和感を覚えて、よく本を見ると、版元が講談社になっているではないか!
 ちなみに1〜3巻は芳文社から出ていて、連載していた雑誌も、もちろん芳文社の「まんがタイム」系でした。
「完結編」のあとがきを見ても、本のどこを見ても作品の初出データがなく、版元を移った断り書きさえもない。事情は想像はできますが、あくまで想像ですので、ここには書きません。よくある話です。
 ちなみに小池田マヤは、ストーリー性の強い4コマ漫画を描く人で、私は絵柄も含めて大変気に入っています。上記の「完結編」はそれまで普通の4コマだったのが、クライマックスで突然、見開きの大ゴマ連発。度肝を抜きます。
 作者はそれまで「僕のかわいい上司さま」とか「ときめきまっくん!」というほのぼの4コマを描いていたのですが、この「すーぱータムタム」執筆中あたりから、抑圧されていたものが解放されていったのでしょう。
 私の好みからは、生臭い近作よりは昔のほうが好きなんですけど……。落ち着くのを静かに見守りたく思います。
 さて、そろそろ次の仕事に着手しなくては。では。

(2001.7.13記す)
2001.7.15 ◇to page top


「黄金の血脈」の裏話と次作について

「黄金の血脈」は、予想した以上に「あとがき」が好評なようです(本サイト以外でもそういう声を聞いた)。
 じつは私はあとがきを書くのが大変苦手でして、いつも苦労しています。「黄金」は「解説」を書こうという意識が明白でしたので、わりと楽でしたが。
 解説といっても、自作の解説ではありません(さすがにそれは減点物でしょう)。ミステリーの歴史、探偵像の変遷というものを、若い読者にも知っておいてもらいたかったのです。
 以前に格闘家としてのシャーロック・ホームズのパスティーシュを自分で書いていましたので、そこを起点に、名探偵絶滅の危機からその再評価と復活、現状までを駆け足で紹介。ツボを押さえたところがウケたのかもしれません。やはりヤングアダルト小説(の一部の作品に)解説は必要です。
 ここで、近況。9月発売予定の「ドラゴン・マガジン」のミステリー増刊号用に「新変格探偵の冒険と暴投」という短編を書きました。
「黄金の血脈」とは一味、いや、まったく違うタイプの探偵が登場します。タイトルからして一目瞭然ですが……。かなりイッちゃってます(笑)。
「変格探偵」という言葉は、ちょっと説明が必要かも(作中では一切語られていない)。いずれはそれも「あとがき」で書くときがくるかもしれませんね。

(2001.7.5記す)
2001.7.13 ◇to page top


変わった植物の本

 というタイトルで唐突に本を2冊紹介します。
(動植物に関心があるという前置きを考えていたら、それだけで膨大な量になりそうなので割愛する。ただひとつだけ書くと、私は東京ディズニーランドに行ったことは一度もない。まるで興味がわかない。ただし、その近くにある葛西臨海水族園には20回以上行ったことがある。平日の昼間、空いているときに行ってじっくりと観察する。……そういう人間なのです。しかし、今回は魚ではなく、植物の話)

「毒草の庭」 井上雅義編 下中弘アッセンブル エクスプランテ 2400円+税

 これはガジェットブックスというシリーズで出ているもので、文字どおりガジェットと本でワンセットになった箱型の出版物。アッセンブルというのは詰め合わせ担当ということでしょう。
 箱の中には、毒草に関するエッセイ、小説、図鑑がまとめられた薄い本(48ページ)と毒草のタネ(!)が納められている。
 なんと危ない企画本であろうか……。
 その毒草とは、アサガオ、オニゲシ、キツネノテブクロ(ジギタリス)、チョウセンアサガオ、ハナタバコ、ヒエンソウ、ベラドンナの7種類。
 もっとも、これらの毒草はタバコほどは有毒ではないそうです。念のため。
 毒を持った植物は危険だが、どこか妖しい魅力があります。
 妖しいといえば、食虫植物もまた然り。
 食虫植物は約450種からなるそうです。私もハエジゴクを買ったことがありますが、やはりもっとも気を惹かれるのはウツボカズラ(ネペンテス)でしょう。
 で、紹介するのは、そればかりを集めた妙な写真集です。

「無憂草」写真・菅原一剛、倉田重夫 文・及川哲也 PARCO出版 1942円+税

 これはジャングル・ブックと銘打たれたシリーズの1冊。1992年に出た本なのでもう入手不能かも(消費税もまだ3%の時代)。あえて取り上げてみたのは、自分が当時買った本物のウツボカズラの写真が出てきたため(笑)。飼っている犬や猫の写真を公開する人と同じ心境ですな。
 一口にウツボカズラ属といっても種類は多く、捕虫袋の大きさや数も様々。私が買ったものは図鑑を見るとネペンテス・アラータもしくはテンタキュラータらしいです。夏場には虫などを食わせてやっていました。
「無憂草」を見た友人が一言。「男性器と女性器を合わせたようなエロティックな植物ですねぇ」
 いや、まったくそのとおり。大きな園芸店に行けば、けっこう売っているものです。ぜひ観察してみて下さい。
▲上の画像をクリックすると、ウツボカズラ写真展示室を開きます。写真を縮小していないので、ファイルサイズが大きいです。ご注意ください

(2001.5.16記す)
2001.7.5 ◇to page top


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