柴野拓美さんのこと
柴野拓美さんがお亡くなりになった。16日午後8時6分。享年83歳。
生前のご意志により、宇宙葬になるとのこと。ご冥福をお祈りします。
柴野さんの日本SF黎明期からの長い長い活躍については、多くの方が書かれているだろうし、すでに御存知だと思うので、ここでは個人的な思い出を記しておきたい。
柴野さんを初めて生で目にしたのは、1981年、東京で開催されたSFショーのステージ上だった。他の多くのSF作家たちと一緒に紹介される中、「僕のようなアマチュアが〜」とスピーチされていたことを覚えている。
もちろん、小隅黎名義で創作、翻訳、アニメのSF考証等のプロ活動はされていたわけだが、「宇宙塵の柴野拓美」として「アマチュア代表」の自負を感じたものだ。あとで御本人の書かれたものや発言等に触れて、それは正しかったと思った。
直接お会いするきっかけになったのは、「宇宙塵」に入会して小説を投稿したあと、御本人から「お会いしたいので、例会に来てくれ」という達筆の(地図入り)ハガキをいただいたことだ。それが1986年。
何人もの作家のエッセイで、そうやって「来てくれ」という場面を読んでいたので、非常にドキドキしながら自由が丘の会場まで足を運んだ。
投稿した作品は、「異星人の宇宙船調査チームの中で起きた不可解な殺人事件」を描いた100枚ほどの短篇。「シチュエーションと個々のアイディアは面白いんだけど、整合性に問題あり。こことここを直したら、『宇宙塵』に載せられますよ」というコメントをいただいた。
素直に従って、すぐ書けば良かったのだが、同時期に勤めていた会社の仕事(当時流行していたゲームブック工場と化していた)が多忙になり、土日も無くなっていたので、結局それを完成させるタイミングを逸してしまった。
(実際のところ、それは言い訳。本当に書きたいのなら、どんな状況でも書いている。投稿作品は背伸びして書いたもの。柴野さんの眼鏡にかなう本格SFは、読む方は好きでも、書く方となると自分のカラーではないと思っていた)
次の接点となったのは、比較的時間もできて、ふたたびチリコン(宇宙塵の例会)に通うようになった1990年。
長い歴史を持つ「宇宙塵」には、同志たちが作ったパロディ誌がある。「宇宙鹿」(1962年)と「宇宙塵紙」(1976年)だ。
ある日、突然ひらめいた。今年(1990年)にそれを作れば「14年ごと」になると。
そのアイディアを話すと柴野さんもノッてくれた。
お遊び企画ではあるけれど、当時は柴野さんから日本SF黎明期の話をいろいろと聞きたいという願望があり、二宮の御自宅で貴重なインタビューの機会もいただいた。
当然そのままでは掲載できないオフレコ話をうかがうこともでき、そこは誌面では「検閲済み」ということで、実際に版下に墨を塗っておいた。
そうして出来たのが「宇宙馬鹿」である。
(同時にこの年は、「パラドックス」という自分のSF同人誌で「スペースオペラ特集」を企画。日本テレワークにおじゃまして野田昌宏さんにインタビュー。同号で日本SFファンジン大賞を初めていただいた。最初の柴野さんの印象ではないが、「SFファン活動の醍醐味」を感じた年だった)
1992年、「宇宙塵」35周年の年には、「宇宙塵」創刊号の復刻版を提案し、貴重なその号を預からせていただいた。
こちらで手を入れたのは奥付だけで、「1957年初版、1992年第二版」とした。
「なんで自分の名前を入れなかったの?」と言われたが、畏れ多くてそんなことはできない。
この「復刻版」は35周年パーティの参加者たちに配られたが、ちょっとしたサプライズになり、多くの方々に喜んでいただいたと聞いている。
自分の名前は、あとで「宇宙塵」の歴史をまとめた『塵も積もれば…』に出していただいたので、それで充分と思っている。
その後、自分は架空戦記のジャンルでデビューして、また少しずつチリコンから足が遠ざかる。
柴野さんは架空戦記には関心がなかったので、こちらからは本を送ることはしていなかったのだが(「パラドックス」は送っていた)、2001年のSF大会でお会いしたとき、「面白いの書いたそうじゃない。今度送ってよ」とおっしゃられた。
どうやらSF界の一部で話題になっていたようで、慌てて送ったその本は『第二次宇宙戦争』という。
偶然だが、90年にインタビューしたとき、柴野さんの口から聞いた思い出の1冊こそ、H・G・ウェルズの『宇宙戦争』だった。
2010.2.18 ◇to page top
最近入手した本やDVDソフト 2009年12月編
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
こちら昨年末に出たばかりの『水平線まで何マイル? 双つの翼』ですが、HJ文庫さんが特設ページを作って下さったので御紹介します。
http://www.hobbyjapan.co.jp/hjbunko/horizon/
「MC☆あくしず」さんのブログでも取り上げて下さいました。
http://mcaxis.dtiblog.com/
ありがたいことです。
では、例によって先月分のリストです。
値段は税抜きだったり、税込みだったり、割引き期間中だったり、それぞれです。献呈本も古本屋で買った本も正価表示。DVDの新譜の多くはネットで買っているので、実際はもっと割引されています。表示金額はあくまで目安ということで。
○『戦場取材では食えなかったけれど』 日垣隆編著 幻冬舎新書 740円
○『ロンメル戦記』 山崎雅弘 学研M文庫 933円
○『フィッシュストーリー』 伊坂幸太郎 新潮文庫 514円
○『ヘリックスの孤児』 ダン・シモンズ 酒井昭伸・嶋田洋一訳 ハヤカワ文庫SF 900円
○『やさしい小さな手』 ローレンス・ブロック 田口俊樹他訳 ハヤカワ文庫HM 1000円
〈現代短篇の名手たち7〉
○『スフィンクス』 萩尾望都 小学館 505円
○『はじめの一歩』90巻 森川ジョージ 講談社 419円
○『絶対可憐チルドレン』19巻 椎名高志 小学館 400円
○『キングダム』16巻 原泰久 集英社 514円
○『コンビニDMZ』4巻 竿尾悟 少年画報社 571円
○『おおきく振りかぶって』13巻 ひぐちアサ 講談社 524円
○『佐武と市捕物控』第四集 石ノ森章太郎 小学館 1400円
DVD
○『アルゴ探検隊の大冒険』 ドン・チャフィ監督 ソニー・ピクチャーズ 1980円
○『ワールド・オブ・ライズ』 リドリー・スコット監督 ワーナー 1500円(期間限定)
○『グラン・トリノ』 クリント・イーストウッド監督・主演 ワーナー 3980円
○『日本沈没』(1973年) 森谷司郎監督 デアゴスティーニ 1895円
○『青い花』3巻 カサヰケンイチ監督 メディアファクトリー 5500円
○『AIKa ZERO』3巻(最終巻) 山内則康監督 バンダイビジュアル 4800円
2010.1.2 ◇to page top
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