伊吹秀明プロフィール
●プロフィール Ver.4
伊吹秀明(いぶき・ひであき)
北海道富良野市生まれ。蠍座のB型。
会社員を経て、フリーの文筆業に入る。小説を書いたり、戦史・SF・ミステリ関連の読み物を書いたり(「ミリタリー・クラシックス」「MC☆あくしず」「歴史群像」「別冊宝島」等)。
趣味でハンス・ベルメール、ジョック・スタージェス、ヘルムート・ニュートン、ベティ・ペイジなどのオリジナル・プリントをコレクションしています。
日常的な(?)つぶやきはこちらにて。
伊吹秀明名義で活動をする前は、東京でとある編集プロダクションに勤務していました。最初は一通り編集の仕事をしていましたが、そのうち原稿書きがメインに。
大出光貴というペンネームで書いた「マルカツファミコン」の付録冊子「桃太郎伝説」が、おそらくは商業出版された最初の小説。
前後して双葉社のファミコン冒険ゲームブックでも「桃太郎伝説」シリーズ全6作を橋爪啓氏らと手がけていました。これが1980年代の後半。
もうひとつの活動として「PARADOX」があります。
これは1977年に創設されたSFサークルで、私が1987年から代表・編集人を引き継いだものです。毎号SFやファンタジーの創作を中心に、格闘、セクシャリティ、ネコなど幅広い領域のテーマで同人誌を作りました。
2002年解散するまでに、日本SFファンジン大賞を2回、そのアート部門賞3回、創作部門賞1回、評論部門賞1回を受賞。
「変格探偵特集」を刊行したときは中井英夫先生や宇山日出臣氏にお褒めの言葉をいただき、「SF格闘特集」のときはその種の本から原稿依頼が来ました。「セクシャリティ特集」はミリオン出版の方の目にとまり、商業アンソロジー『SFスナイパー』の刊行につながったことは良い思い出です。
【自作について】
1990年代に独立してからは、伊吹秀明の筆名で活動。最初は架空戦記が多かったのですが、しだいにSFやライトノベルなど、色々なものを書くようになりました。
単行本を中心に御紹介しましょう。
『氷山空母を撃沈せよ!』 トクマノベルス(全3巻) 1993年
徳間文庫(上下巻) 1996年
コミック版 作画・沖一 歴史群像コミックス(全3巻)
徳間書店の「奇想艦隊」に掲載された短篇「ヤマモトを撃墜せよ!」と「フー・ファイターズ」は外伝にあたります。後者には異星人も登場。
米海軍が完成させた究極の奇想巨大兵器・氷山空母〈ハボクック〉とそれに挑む連合艦隊の死闘。
当時の担当者に幾つかの案を提出したところ、「デビュー作は派手なやつでいきましょう」ということでこれに。作中の〈ハボクック〉は、戦時中、実際に計画された氷山空母の3倍以上のスケール。確かに派手になりました。
『帝国大海戦』 歴史群像新書(全8巻) 1994-1999年
コミック版 作画・細馬信一 歴史群像コミックス(全3巻)
日英同盟が維持されたまま対米戦争が行われていたら? という設定の架空戦記シリーズ。日本にイギリスのレーダーその他の技術移転がなされ、マレー・バリアと呼ばれる広大な英植民地が前線基地となります。
『帝国戦記』(2000年)は、『帝国大海戦』と同じ舞台の短篇集。
「南海のゼーゴイセン」「猫の戦記」「ラスト・ミッション」「迷霧の荒鷲」を収録。
「迷霧の荒鷲」はパラレル戦記と銘打って、『帝国大海戦』の戦後に「アメリカで架空戦記ブームが起きていたら?」というパロディ/メタフィクションになっています。
『邀撃マリアナ海戦』 中央公論社C・NOVELS(全3巻) 1994-1995年
山本五十六とともに死んだ名参謀の秘策を受け継いだ主人公が、マリアナ諸島に襲来する米機動部隊に立ち向かう。
ひとつの海戦をじっくり描くというコンセプトの作品。執筆時点で史実の有名な海戦はほとんど他の方に書かれていて、残っていたのはマリアナ沖海戦くらい。これをひっくり返すのは容易ではなく、海戦に至るまでの準備段階から練りました。
「コンバットマガジン日本版」Vol.75(2007年)の内田弘樹氏のコラムで紹介されたことも。
『スター・パニック』 ワニノベルス 1996年
『零式スターパニック』 ファミ通文庫 2000年
アイドルが一日地球防衛軍司令長官をやっている日に宇宙人がやってきたら? 未来の関西空港が基地になっているとか、銀河大名行列艦隊(高速無礼討ち艦隊)とか、こってりと盛りこんでみました。
ファミ通文庫版の『零式』は、ヒロインの名前を変えるなど、いろいろ大きく改稿しています。
『シャーロック・ホームズの決闘』 幻冬舎 1997年
名探偵シャーロック・ホームズは推理力だけではなく、ボクシングやフェンシングの名手としても知られています。モリアーティ教授との死闘を制したのも「バリツ」と呼ばれる日本の格闘技を身につけていたからでした。
そうした「格闘家としてのホームズ」をテーマにした連作集。降霊術やピルトダウン原人などのコナン・ドイルに関連する要素も盛りこみました。
『星方遊撃隊エンジェル・リンクス』 富士見ファンタジア文庫(全4巻) 1998-1999年
コミック版 作画・井ノ本リカ子 富士見書房
「誕生編」「激闘編」「帰還編」「銀河爆闘編」からなる。「月刊ドラゴンマガジン」に連載されたものが「激闘編」となり、あとは文庫書き下ろし。
16歳にして祖父のコンツェルンを受け継いだ、じゃじゃ馬億万長者の李美鳳(リー・メイフォン)は、宇宙海賊退治に乗り出したが、彼女には大きな秘密があった……。
伊東岳彦氏の依頼を受けて書いた「星方武侠アウトロースター」と同じ宇宙を舞台にした作品。「大艦巨乳主義による中華風スペースオペラ」がキャッチフレーズ。
レーザーを激光、酸性雨を空中鬼と書く中国語の科学用語、包囲殲滅することを「包餃子」と書くなどの慣用句を多用。またテレパスに対する心理ジャミング、ブラックホール機雷敷設艦といったSFアイディアも盛りこんだが、99年、「激闘編」をストーリー原案として制作されたアニメ『星方天使エンジェルリンクス』には使われていない。メディアの特性の違いだろう。
なお、井ノ本リカ子さんのコミック版は香港版、台湾版も出版されています。
『第二次宇宙戦争』 ワニノベルス 2000年
H・G・ウェルズの『宇宙戦争』は、侵略してきた火星人が細菌によって死滅するところで終わる。しかし、その恐るべき戦闘機械は無傷のまま残されているのだ。この作品は20世紀の初頭から、そうした超兵器を手にした列強諸国と日本がどのような道を進んだのかを描いている。
ベテランのSF読みの方々からお褒めの言葉をいただき、嬉しかった作品。表紙イラストの高荷義之氏も大ノリだったと、当時の担当氏からうかがっています。
ちなみに英語版ウィキペディアの「H.M.S.Thunderchild」の項目では、この作品についても触れられています。
『出撃っ! 猫耳戦車隊』 ファミ通文庫 2000年
『猫耳戦車隊、西へ』 ファミ通文庫 2001年
未来の地球、衰退した人類は謎の敵ヴォータンと戦争状態にあった。亜人類として誕生した猫耳少女たち(他にもいろいろいるらしいが、登場するのはもっぱら彼女たち)は、戦車に乗ってヴォータンと戦うのだ。
ネコミミ少女のようなキャラを使ってミリタリー作品(百合要素もあり)を描くのは発表当時には珍しく、あちこちで評判となり、野尻抱介さんにも持ち上げていただいたものです。
のちに短篇「プライベート・ニャンニャン」「猫と軍艦」を自主制作本に収録。
『黄金の血脈』 富士見ミステリー文庫 2001年
黄金の仮面をかぶった死体を発見したミステリーマニアの橘みつきは、謎めいた同級生の笠城拓海と事件の渦中に足を踏み入れるが……。
「タイタニック号とともに沈んだジャック・フットレルの未発表原稿があったら」とか、「『使用人を犯人にしてはいけない』『制服を着た人間は透明人間』ということが正しかったらとしたら、メイド服を着た透明殺人鬼は無敵では」という好きなミステリー談義も盛りこんでみた。
しかし、これを書いていた当時は、それまでになかったタイプの犯罪事件が横行していて、リアル世界の方が刺激的だなと思っていた。それで無謀にもアンチミステリ的な方向に筆がいったようです。
『マーズアタック・ガール!』 富士見ファンタジア文庫 2002年
「ドラゴンマガジン2002年4月増刊ファンタジア・バトルロイヤル」に載った短篇「マーズアタック・ガール! あるいは天光院三姉妹はいかにして新たなる火星戦記に関わることになったのか」を第1章にして長篇化したスペースオペラ。
「一富士、二鷹、三ナスビ」を名前に持つ三姉妹の末妹が、火星の軍神に見いだされて超人的なパワーを得、立ち上がった「人面岩」の巨人と戦うことに。
執筆時は火星大接近の年ということもあり、火星に関する神話、SF、オカルトをチャンプルー状態にしてます。
『溟海の鋼鉄葬』 歴史群像新書 2002年
1946年7月、ビキニ環礁で行われた原爆実験にて、とてつもない異変が起きる。閃光と同時に、標的となっていた長門、酒匂、プリンツ・オイゲン、ネヴァダ、サラトガなど95隻がすべて姿を消した。物言わぬ軍艦の叛乱なのか? のちに「亡霊艦隊事件」と呼ばれた奇っ怪な大事件の始まりだった。
架空戦記というよりは、幻想奇想小説に類する作品だと思います。終戦直後の世相や人びとの暮らし等も書きこみ、某マスコミの方やマニア層から高い評価をいただきましたが、同時にジャンルの壁も感じたものです。
『異説ミッドウェー』 歴史群像新書 2002年
インド洋での戦訓から、MI作戦において連合艦隊は艦隊布陣を大幅に変更。史実とは別の戦いが始まる。
『溟海の鋼鉄葬』が超異色作だったので、次はあえてオーソドックスなものに着手。初心者向けとして冒頭に史実のミッドウェー海戦を解説、次に中長篇「ミッドウェーが水無月島になるとき」、最後にSF短篇「あの艦を撃て!」を配しました。
『天空魔弾』 歴史群像新書(全2巻) 2003-2004年
朝鮮半島から飛来した弾道ミサイルが炸裂したとき、日本列島全体が昭和20年の夏にタイムスリップしてしまった。押し寄せるB-29の大群。果たして原爆投下は阻止できるのか?
自衛隊だけではなく、政府の各種機関、マスコミ、世論(一部マニアな人たち)を含めたシミュレーション小説。
『舞-HiME★DISTINY〜龍の巫女〜』 HJ文庫(全2巻) 2007-2008年
北海道の山奥、人里離れた星之宮風華学園に神楽真夜が転校してきたところからドラマは幕を開ける。記憶を失った彼女は、どういうわけか手錠につながれていた……。『舞-HiME』『舞-乙HiME』に続くシリーズ第3弾。
サンライズの古里プロデューサーの御指名をいただいて執筆。このシリーズの特色のスターシステムによって、アニメのキャラクターたちが主要キャストとして登場している(後に制作されたOVA『舞-乙HiME S.ifr』には、この作品のヒロイン真夜もラケル・マヨールとして出演した)。
ホビージャパンの「ノベルジャパン」「キャラの!」に連載したものを第1巻「プリズン・キャスト」、第2巻「ウェルメイド・フレンズ」として単行本化。台湾版、韓国版も発行されている。
ランティスから発売されたCDドラマ(全3巻)、「キャラの!」に掲載されたコミック「胸さわぎの捜査線」(作画・目黒三吉)の脚本も担当した。
作中でやった念動力による「パンツ引きずり下ろし合い合戦」は映像で観たいものであります(笑)。
『トルネード!』 HJ文庫 2009年
格闘技オタクの葉桜栄斗は、ある日ストリートファイトの帰り、「トルネード」と呼ばれる凄腕のファイターと遭遇する。ハイレベルなカポエラ技を使う彼女は、深窓のお嬢さまだった。
本物のカポエラ(カポエィラ)は必ずしも逆立ちするわけではないですが、やはりさせてみたいものですよね。とくにスカート姿の美少女には。四季童子さんにパンチラ絵を描いていただいて本望です(^^)。
細谷正充氏に「格闘小説の異端の傑作『パンダにバックドロップを』の作者だけに、異種格闘のシーンは抜群だ。(中略)いろいろと“見どころ”の多い物語である」と朝日新聞に書評していただきました。
『水平線まで何マイル? 双つの翼』 HJ文庫 2010年
不真面目な活動から解散を迫られた「宇宙科学会」は、存亡を賭けて(?)ライトモーターグライダー大会に出場することになった。それは電気の力だけで空を飛ぶという、史上初の航空機の大会だった。ABHARのPCゲームのノベライズ。
2009年に発売された『すまいるCubic! 水平線まで何マイル? ファンディスク』のシナリオに参加していましたので、それが縁になって書くことになりました。メインに据えた女の子のチャームポイントがお尻なので、「お尻に始まりお尻に終わる」お話になりました。
こちらはアンソロジー
『SFスナイパー』 アプリコットノベルス 1998年
前述の「PARADOX」掲載作によるアンソロジー。ミリオン出版の鈴木氏のお誘いにより実現した。なお、SF同人誌から商業アンソロジーが出版されたのは、「宇宙塵」「ネオヌル」に次ぐ三例目。
タイトルは、もちろん「SMスナイパー」のもじりから(かつてその版元はミリオン出版だった)。「『何をしてもいいのよ…』とSFはいった」という鈴木氏のコピーは秀逸でした。
本書に載った伊吹作品は、怪獣が現れたというのに、その名前をどうするか、珍妙な議論が続く「怪獣対策会議」(1993年PARADOX 33号)、地球最強の座を賭けてジャイアントパンダにガチバトルを挑む「パンダにバックドロップを」1994年PARADOX 37号)の2本。後者は、あちこちにディープなファンが多いようです。
Update/2002.11.18 Enhanced/2003.4.26 Enhanced/2003.8.5 Update/2004.5.7 Update/2007.9.17 Update/2010.2.22
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